EIP-8363Visual Guide
Draft — 採用は未決定

ステーキング報酬は、どこへ向かう?

イーサリアムの発行報酬を段階的に燃やす提案が出ました。ETHの半分がステーキングされたとき、報酬をゼロにする設計です。図とアニメーションで、しくみと賛否を見ていきます。

EIP-8363 “Tapered Issuance Burn” / 2026年8月4日提出 / 全4章

0 総供給 約1.22億 ETH
ステーキング済み 41.5M (34%) 提案の飽和点 60.25M (約50%) 未ステーク

00 — いま / まずは基本

ステーキングは、ETHを預けてネットワークを守る仕事

32 ETHを預けたバリデータが、ブロックが正しいかを確認し、その働きに報酬を受け取ります。この報酬の出どころが、今回の提案の舞台です。

ステーキングの3ステップ STEP 1 Ξ 預ける 32 ETH をロック STEP 2 検証する ブロックに賛成の署名 STEP 3 + 報酬を得る 年 約2.65%(現在)
💡

ステーキングが増えるほど、1人あたりの利回りは下がります。ただし今の設計では、どこまで増えてもゼロにはなりません。全ETHが預けられても年約1.5%が残る——この「消えない下限」が、提案のきっかけです。

00 — いま / 現在地

いま、供給の3分の1が預けられている

比率が3分の1を超えたのは2026年4月。参加の行列はプロトコルの上限に張りついたまま、いまも毎月およそ173万ETHずつ増え続けています。

Staked
0.0M ETH
過去最高を更新中
Ratio
0.0%
総供給に占める割合
Yield
0.00% APR
発行+手数料+MEV
Queue
0日待ち
約249万ETHが順番待ち
ステーキング比率 — 飽和点までの距離 0.0% → 49.5%
0%25%50% ← 提案の飽和点75%100%
オレンジの線が、この提案で発行報酬がゼロになる 60.25M ETH(供給の約49.5%)。青いバーとの間隔が、議論のすべてが起きている場所です。

なぜ「毎月173万ETH」なのか — 入口には固定の関所がある

預けてもすぐには参加できません。プロトコルが入場ペースに上限をかけているためです。この上限がいま満杯で張りついていることが、議論を急がせています。

参加キューとチャーン上限のしくみ 順番待ち 入場の上限 参加中 約249万 ETH 43日待ち 新しい預け入れ 256 ETH 1エポック(6.4分)あたり 41.5M ETH 約89.5万バリデータ
256 ETH × 225 エポック(6.4分×225=1日) = 57,600 ETH / × 30 = 約173万 ETH / 月
関所の幅は決まっています。バリデータ集合が一度に入れ替わるとコンセンサスが不安定になるため、プロトコルが意図的に絞っているのです。いまは通れる量いっぱいまで人が並び続けている状態——だから増加ペースは上限に張りついたまま動きません。
📈

この差は縮み続けています。何もしなければ2028年初頭までに7,000万ETH超(供給の55%超)に達する、というのが提案者の試算です。

00 — いま / 報酬の中身

バリデータの収入は、2種類でできている

プロトコルが新しく発行するETH(発行報酬)と、利用者が払う優先手数料+MEV。今回の提案が触るのは前者だけです。ここが最大の誤解ポイントなので、先に覚えておいてください。

発行報酬 — 新しく発行されるETH 優先手数料 + MEV — 利用者が払う分
現在の収入構成(提案書の試算値)。この青い部分を、ステーキング比率に応じて燃やしていく——それが「Tapered Issuance Burn」です。
🔍

「報酬がゼロになる」わけではありません。ゼロに向かうのは青い発行報酬だけで、オレンジの手数料とMEVは残ります。ただし、この構成比が変わること自体が新しい論点を生みます——それは第2章で。